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火曜日, 10月 8, 2024

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日本のヘルスケアDXをデジタル技術で後押しテクノロジーで社会課題の解決を目指す

ベトナムIT最大手FPT

ベトナムのITリーディングカンパニーであるFPTソフトウェアは、病院や薬局の情報システムや医療機器ソフトウェアなどを通じて、ヘルスケア分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するビジネスを多く手掛けている。今後は日本でも同分野のDXソリューションを積極的に展開する計画だ。FPTは日本の社会課題にどう貢献できるのか。日本法人FPTソフトウェアジャパンのレー・タン・ハイ グローバルヘルスケア事業本部本部長と、岸慶騎グローバルヘルスケア事業本部副本部長に聞いた。(聞き手は大和田 尚孝=日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ所長)

――FPTはベトナムのヘルスケア分野でどんなビジネスを展開していますか。

岸:ヘルスケアと呼ばれる分野のシステムであれば、ほぼ全てを手掛けています。例えば電子カルテや調剤薬歴システム、医療機器ソフトウェア、デジタルヘルスに関するシステムなどです。

 当社のヘルスケア分野におけるビジネスは、金融や自動車などの分野で培った堅牢でセキュアなシステム作りのノウハウがベースにあります。多くの病院や医療機器メーカー様から当社の技術や製品を高くご評価いただいており、今日ではベトナムだけでなく、日本や欧米の多くのメーカー様とお取り引きできるようになりました。

 日本においては、国内のほとんどの医療機器メーカー様とお取引させていただいています。他のシステムとしては、病院内の「部門システム」と呼ばれる放射線や臨床検査部門など各診療科部門が使うシステムを構築した実績があります。今後拡大していければと思います。

 医療機器は、病院内の様々なシステムと接続する必要があり、電子カルテや各診療部門システム、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)を通じてデータウエアハウス(DWH)などのデータ分析基盤ともつながっています。

ハイ:ベトナム本国では保険会社の第三者機関TPA(Third Party Administrator)向けの被保険者管理基盤システムも作っています。

岸:医療機器の品質管理システム構築のための国際標準規格であるISO13485を取得していることも大きな強みです。ヘルスケア分野に強くコミットし、高い品質を担保することが目的です。

――薬局向けには、どのようなソリューションを展開していますか。

ハイ:実はベトナムにおいては、自社で保険調剤薬局チェーンを展開しています。グループに小売業を手掛けるFPTリテールという企業があり、その傘下に保険調剤薬局チェーンを展開するFPTロンチャウがあります。FPTロンチャウで使うシステムは全て自社で開発していますので、保険調剤関連のシステム、例えば電子薬歴やオンライン予約、患者向けのスマートフォンアプリも網羅的に手掛けています。

 FPTロンチャウは2018年にFPTグループに加わった企業で、その時点では数店舗の小規模なチェーンでした。そこから急成長を遂げ、現在は1500店舗を超えるベトナム最大手の保険調剤薬局チェーンになりました。

 この成長を支えたのがDXであり、取り組みの一例として店舗システムがあります。フロントエンド、バックエンドに関わる全てのシステムをクラウド上で動かすことにより、新たな店舗の開設に必要なシステムを数分で用意できます。これ以外にも、高精度の需要予測システムの活用など、様々なDXを進めています。

岸:日本の薬局の方から、「なぜそのようなハイペースで出店できるのか」と興味を持っていただく機会が増えており、視察にお連れすることもあります。

欧米の動きを注視し、日本企業の支援に生かす

――日本のヘルスケア業界にはどのような課題があると考えていますか。

岸:日本の電子カルテなどの医療情報システムは個々の医療機関ごとの使い勝手を向上させることを優先したため、システムに蓄積された患者基本情報や様々な臨床情報はデータベースとしての標準化が進んでいません。そのため、地域医療連携における病院やクリニック間での紹介患者のデータ連携にも課題があります。他にも医療情報をデータ分析することで医療費の適正化や医療の質の向上へのデータ二次利用が現在注目されていますが、データモデルとしての標準化ができていないと同一条件でのデータ分析をすることもできません。医療ビッグデータを医療AI開発の学習教師データとして二次利用することや、ソフトウェア医療機器や治療用アプリなどの医療DXの推進にも支障をきたします。

――そのような課題を、FPTはどのように解決しますか。

岸:厚生労働省もデータの標準化に「HL7 FHIR」と呼ばれる、病院間での医療情報連携のための新しい標準規格を推奨する動きが始まっており、遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において、必要な患者情報を共有するための電子カルテの導入を目指すとしています。当社は、今後様々な医療情報システムに蓄積されていくデータをHL7 FHIRに変換し、最新のユーザー体験を実現するスマートフォンなどのヘルスケアアプリの構築やデータ二次利用ソリューションを提供できます。

 一方で、HL7 FHIRのデータはXMLまたはJSONと呼ばれる一般的なアプリケーションと連携しやすい形式で、一時的なデータの保存やアプリケーション間のデータ交換手段には最適ですが、大規模に蓄積して医療ビッグデータとしてのデータ分析やAI開発に活用するといった用途には向いていません。そこで当社は、HL7 FHIRのデータを、リアルワールドデータと呼ばれる医療ビッグデータ基盤として既に全世界人口の10%、8億人の患者情報が蓄積、利用が進んでいるOMOP CDM(Observational Medical Outcomes Partnership Common Data Model)と呼ばれるデータモデルに変換するソリューションプラットフォームも併せてご提供し、データ分析のための環境作りをご支援する考えです。そのために必要な技術基盤体制は、既に整えています。

FPT医療データプラットフォームの構図

ハイ:欧米でデジタルセラピューティクス(DTx)と呼ばれる、行動変容を促すアプリがあります。生活習慣病などを治療するために、アプリを「お薬」のように医師により処方されて、保険適用で患者は3割負担にて利用します。日本では取り組みはまだ数例のみですが既に製薬企業やデジタルヘルスITベンダーなどが参入し市場規模は拡大していっています。当社は医療情報データ基盤と最先端のアプリ開発、医療機器に求められる堅固なセキュリティ品質体制を強みにして製薬企業様やデジタルヘルス企業様の医療DX推進にも貢献しています。

岸:当社は、ヘルスケア分野のシステム開発のできるITエンジニアを豊富に抱えています。昨今の日本では最先端のユーザー体験を実現するWebアプリケーションやiPhone/Androidのネイティブアプリを開発実装できるエンジニアは引く手あまたであり、プロジェクト遂行のための十分な技術スキルを保有した人員を確保することは至難の業です。ヘルスケア分野でも前述のDTxや、SaMD(Software as a Medical Device)と呼ばれるソフトウェア医療機器の開発は、最先端のWebアプリ/スマートフォンアプリによるアーキテクトデザインが主流です。FPTにはベトナムを中心にこれらのニーズに対応できるAngularやReact、Swift、Kotlinなどの実装可能なエンジニアが1000人単位で在籍しています。この豊富なリソースを使った対応力によって、多くの日本企業のお力になれるはずです。

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